Rebellion
「おい、人間。お前名前はなんという?」
「俺はナド。あんたはいきなりなんなんだ」
「そうだな。リベリオンで覚えてくれるとありがたい」
「名前、あるんだな」
「俺が勝手に名乗っているだけだがな。それはそうと、お前に答えて欲しい質問がいくつかあるのだが」
「質問?」
「目覚めてから間もない状態でな、この星のことを教えてくれるとありがたいのだが」
「この星?ああ、この星はトライアっていう名前で…いや、具体的に聞いてくれ、何が聞きたい?」
「詳しいことはわからないだろう、大雑把なことだけ聞くぞ。この星には衛星はいくつある?」
「衛星?」
「むむ?そうだな…惑星の周囲を周る…どう表現すればいいのか…月?そうだな、月はあるか?」
「月のことか?月はついこの前まで4つあったよ。今はもうないけど」
「もうない?ああ、ははは、そうか、そのうちの一つは俺だ」
「は?」
「いや、なんでも……とにかく、今はこの星に衛星はない。ふむ。気にならないか?この星の成り立ちが。知りたくはないか?」
「別に」
「そうだろうな。人間はそういう……専門的な。細かいところを知りたがる者は少ないのだ。故に無知。違うか?」
「馬鹿にするために聞いたのか?」
「ン、失礼。質問をするのは俺の癖のようなものでな。知への欲求というのであるかな……会ったものの考え方を記録しておきたいのだ、うむ、癇に障ったなら謝罪する。すまない」
「結局何がしたいんだあんたは」
「質問だと言っているだろう?俺はただ知りたいだけだ。次はそうだな。1日は何時間だ?」
「24時間だが」
「ああ、やっぱり!そうだろうな。1時間は何分だ?」
「60分だ」
「うんうん、人間、人間よ、ははは!素晴らしいな。1分は当然60秒だろう。なら、1秒の定義はどうだ?」
「秒の?」
「俺の記録ではセシウム133の原子の基底状態の二つの超微細構造準位の間の遷移に対応する放射の周期の9192631770倍の継続時間ということになっているが、それはこの星の話ではないだろう?」
「さあ、そこまで詳しく考えたことはないな」
「フン、やはりな。最初から期待してはいない。安心したまえ。俺なら星の動きから計算すれば理解することは可能だ。だが青年、俺は思うのだ。情報は、知識は、早ければ早いほどいい働きをするものだとな。どう思うかね?」
「ああ……うん、そうなんじゃない」
「疲れてきたかね?そうだろう。俺と君たちが対話をすれば無理も無いことだ。俺は対話だけで二人発狂させたことがあるぞ。今は控えるがね」
「発狂……?結局あんた、一体何者なんだ?」
「さて、最後に質問しておきたいことがあるのだが」
「俺の質問は無視なのね」
「お前ごときがこの俺から知識を引き出そうというのは実に滑稽だ。それなりの対価が必要になるぞ?お前の命だけでは済まないだろうがな。名前を教えただけで満足しておくといい」
「やっぱりあんた、馬鹿にしてるだろ」
「とにかく最後の質問だ」
「人を馬鹿にして、答えてもらえると思ってるのか?」
「おいおい、カン違いしないでくれたまえ。どっちみちお前は答えなければ死ぬだけなのだぞ?お前の命の決定権は今、俺がもっているのだ」
「なんだと……!」
「死にたくなければ答えたまえ、青年。ヘリオスのデータベースは今どこにある?」
「データベースだと!?」
「アレは元々俺のモノだ。奴には長いこと貸しすぎた……返してもらわねばならん。この星の情報という利子付きでな。あの中には俺の知識と記録と虚憶が詰まっている。ここにいる理由を、俺が俺である理由を、返してもらわなければならん」
「リベリオン……あんた、俺の命の決定権を持ってるとか言ったな」
「そうだが」
「じゃああんた、強い自信があるんだな」
「そうだが」
「だったら、協力といかないか」
「協力?俺と?お前が?」
「そうだ。データベースはあそこに置いておくわけにはいかない。俺が場所を教える。どうだ?」
「面白い!価値ある情報には相応の対価。よくわかってるじゃないか。だが、俺は安くないぞ」
「俺も安くはないつもりだ。俺と、サンダルフォンは」
「それがアレシウムか?メタライズというやつだな?その力のことも詳しく識らねばならん。いいだろう、案内したまえ」