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Ragnarøk

私、正義の味方になりたかったんだ。

テレビの中のヒーローに憧れてた。

変かな?みんなそう言うんだよね。
そういうの考えるのって、男の子ばっかじゃん。

女の子はある時期を迎えると、
そういうのに興味なくなっていくでしょ。

でも私は違った。だから私、
このシステムの管理者に立候補したの。

選ばれるとは思ってなかったから、
すごく嬉しかった。

その日から私はヒーローになれたんだ。
悪い人をみんな消していった。

ううん…殺したの。私が。
毎日、毎日、それが私の役目だったから。

最初は辛かったよ。でもね、
人って、慣れていくんだろうね。

私、どんどん何も感じなくなってた。

そのうち、何も覚えてないことが多くなってきて、
初めて私は気づいたの。

仕事をしてる時の私は、もう私じゃなくなってた。

それが…ラグナロク
あの怪物の、正体。

だから、もし私が次に戦場に立つことがあったら…。

ーーー


「こちらグリフォン1、目標を発見した」

…ッザー………ザザ…


通信機器の向こうからは、ノイズしか聴こえない。通信網も破壊されたか。思っていたより被害は甚大なようだ。
夜の暗闇に、煌々と燃え上がる街。これほどの被害をもたらしたのが目の前のたった一機とは…実際にその巨体と、その体に装備された無数の武器を見るまでは信じがたかったであろう。

『接敵…破壊…開始』

機械の摩擦音にも聞こえる、無機質な声。
目と思しき箇所にあるバイザーの奥でいくつかの光点がギョロギョロと蠢いた後、こちらに集中した。

「約束を果たしに来た。覚えてるだろ」

奴が右腕に抱えた巨大な大砲。その銃口がこちらを捉える。

『否定』

「俺はお前を破壊する、そして…」

『攻撃…開始』

「お前を…助ける」